軽井沢蒸留酒製造(長野県小諸市、小諸蒸留所を運営)が北海道富良野市に建設を進める「富良詩(ふらりす)蒸留所」をめぐり、同社が富良野市南部・布部地区の旧布部小中学校を取得する方針であることが、北海道新聞の報道で明らかになった。閉校した校舎と敷地を蒸留所の付帯施設として活用する計画で、蒸留所本体は2029年秋の開業を目指す。
富良詩蒸留所は、ウイスキー製造の軽井沢蒸留酒製造、リゾート開発の西武ホールディングス、富良野市の三者が2025年6月に基本合意して始動したプロジェクトだ。「富良詩」の名は、地名の富良野と、至福を意味する英語「bliss」を掛け合わせたもの。建設地は新富良野プリンスホテルに隣接する森の中で、2026年6月15日に起工式を終えている。蒸留所本体の建築工事は2027年春ごろに着工し、開業後は3年以上の熟成を経て2032年ごろのウイスキー出荷を見込む。
「体験」を軸に、通年型観光の核へ
プロジェクトのコンセプトは「体験」。製造工程を見学できるツアーに加え、富良野産の食材とウイスキーのペアリングを楽しめるレストラン、製品の直売所を併設する。蒸留時に出る大麦麦芽の搾りかすを焼き菓子として再利用・販売するアップサイクルの取り組みも計画されている。今回取得する旧布部小中学校は、こうした体験・交流機能の一部を担う付帯施設になるとみられ、冬のスキー客に偏りがちな富良野観光を通年で下支えする狙いもある。
製造を監修するのは、台湾カバランでマスターブレンダーを務めたイアン・チャン副社長。冷涼な富良野の気候が「繊細で重層的なウイスキー」に向くと語る。軽井沢蒸留酒製造は閉鎖蒸留所「軽井沢」のブランドを継承し、オークションで日本産ウイスキーの高値記録をつくった実績を持つ。将来的には富良詩で生産するウイスキーの半数を海外へ輸出する目標を掲げている。
北海道内では新規蒸留所の計画が相次いでいるが、富良詩蒸留所は観光インフラを持つ西武グループとの連携という点で異色の存在だ。閉校舎という地域の遺産を生かす今回の手法も、蒸留所ツーリズムと地域振興を両立させる一つのモデルになりそうだ。
出典: 北海道新聞デジタル