蒸溜所の始まり

ロングロウは、スコットランド西海岸のキャンベルタウンに位置するスプリングバンク蒸溜所内で生産されるウイスキーブランドです。キャンベルタウンはかつて「ウイスキーの首都」と称されるほど多くの蒸溜所が立ち並んでいた歴史ある地域ですが、現在稼働しているのはわずか3蒸溜所のみとなっています。ロングロウという名称は、スプリングバンク蒸溜所が建つ土地にかつて実在した蒸溜所「Longrow Distillery(1824年創業)」に由来しており、その歴史への敬意を込めて命名されました。スプリングバンク蒸溜所はキャンベルタウンの中心部に位置し、海の潮風が漂う独特の環境が熟成に影響を与えています。ロングロウはスプリングバンクとは異なり、ピート(泥炭)を大量に使用した麦芽を二回蒸溜することで、よりヘビーでスモーキーなキャラクターを持つウイスキーとして誕生しました。アイラモルトに匹敵するほどのピーティーさを持ちながら、キャンベルタウン特有の塩気や複雑さを併せ持つ個性豊かなシングルモルトです。

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歴史・沿革

スプリングバンク蒸溜所は1828年にミッチェル家によって創業され、以来一族経営を守り続けてきた希少な蒸溜所です。19世紀後半のキャンベルタウン黄金期には地域全体で30以上の蒸溜所が稼働していましたが、20世紀初頭の禁酒法や経済不況、品質低下による信頼失墜などが重なり、次々と閉鎖に追い込まれました。スプリングバンクもこの荒波を乗り越えながら、1960年代には一時生産停止を余儀なくされています。ロングロウとしての生産が始まったのは1973年のことです。当時のオーナーであるミッチェル家が、ピートを大量使用したヘビーピーテッドスタイルのウイスキーを実験的に製造したのが始まりであり、これがロングロウの原点となりました。1980年代以降は定期的なリリースが行われるようになり、1990年代から2000年代にかけてスモーキーモルトへの世界的な注目が高まる中で、ロングロウはアイラ以外のヘビーピーテッドモルトとして高い評価を獲得しました。2000年代以降はさまざまな樽フィニッシュのバリエーションも展開され、ブランドとしての幅を広げています。現在もスプリングバンク、ヘーゼルバーンとともにスプリングバンク蒸溜所の三本柱の一つとして生産されています。

オーナーのこだわり

スプリングバンク蒸溜所を所有するJ&A ミッチェル社は、蒸溜所の伝統と独立性を何よりも重視しています。現在のマネージングディレクターであるキャロライン・マーティンをはじめとする経営陣は、大手コングロマリットへの売却を拒否し続け、キャンベルタウンの地場産業としての誇りを守っています。ロングロウの製造においては、フェノール値50ppm以上のヘビーピーテッド麦芽を使用し、二回蒸溜によってアイラモルトとは異なる独自のスモーキーキャラクターを引き出すことにこだわっています。また、スプリングバンク蒸溜所は業界でも極めて珍しい「フロアモルティング(床式麦芽製造)」を全量自社で行う数少ない蒸溜所の一つであり、原料から瓶詰めまでの全工程を自社管理するという哲学を貫いています。この妥協なきクラフトマンシップこそがロングロウの個性と品質を支える根幹であり、世界中のウイスキー愛好家から熱烈な支持を集める理由となっています。

テイスト プロファイル

フレーバー軸 スコア(1〜10)
スモーキー 9
フルーティー 5
スパイシー 6
甘み 4
ビター 6

ロングロウの最大の特徴はそのダイナミックなスモーキーさにあります。ヘビーピーテッド麦芽由来のフェノール系スモーク香が力強く立ち上がりながらも、キャンベルタウン特有の潮風を思わせる海塩やタール系のニュアンスが複雑さを加えます。甘みは控えめですが、長期熟成品ではダークチョコレートやドライフルーツの風味も現れ、スモークとのバランスが秀逸です。アイラモルトのメディシナルさとは異なる、どこかアーシーで野性的な泥炭感が個性です。

オフィシャルボトルラインナップ

銘柄名 参考価格 度数 熟成樽 テイスティングノート
Longrow NAS(レッド) 約6,000円 46% バーボン樽+ワイン樽フィニッシュ(年ごとに変更) スモーキーさにベリー系の甘さが絡み合い、飲みやすい入門モデル
Longrow 18年 約22,000円 46% バーボン樽+シェリー樽 熟成による円熟したスモーク、ドライフルーツ、ダークチョコレートのリッチな余韻
Longrow Peated 約8,500円 46% バーボン樽+シェリー樽 ピートのヘビーさと塩気、タール、レモンピールのニュアンスが特徴的
Longrow 21年 約45,000円 46% シェリー樽中心 重厚なスモークにシェリー由来のプラムやスパイス、長く続く複雑な余韻
Longrow Red(各エディション) 約12,000〜18,000円 51〜54%前後 各種赤ワイン樽フィニッシュ(ピノノワール、シラーズ等) 年ごとに表情が変わる限定シリーズ。スモークと赤系フルーツの個性的な融合

ボトラーズ代表銘柄(現行品)

銘柄名 参考価格 度数 熟成樽 コンセプト テイスティングノート
Cadenhead’s Longrow 10年 シングルカスク 約18,000円 カスクストレングス(約56〜60%) バーボンホグスヘッド 地元キャンベルタウンのボトラーが手がける正統派シングルカスク。加水なしの原酒本来の力強さを表現 生き生きとしたスモーク、青リンゴ、海塩、コショウのスパイス感
Berry Bros. & Rudd Longrow 12年 約20,000円 約54% リフィルシェリーバット 英国老舗ボトラーがセレクトした上品な仕上がり。スモークとシェリーの調和を重視したセレクション スモークの奥にドライプラム、バニラ、微かなシナモンが感じられる複雑な構成
Signatory Vintage Longrow 14年 アンチルフィルタード 約25,000円 約46〜48% ファーストフィルバーボンバレル 非冷却濾過・ノンカラーリングにこだわるSignatoryがロングロウの素朴な原酒の魅力を余すことなく表現 フレッシュなスモーク、レモンカード、軽いバニラ、ミネラル感が清潔感ある余韻を生む