蒸溜所の始まり
ブルイックラディ蒸溜所は、1881年にスコットランドのアイラ島西岸、ロッホ・インダール湾の穏やかな水辺に設立されました。創業者はハーヴェイ兄弟(Robert, William, John Harvey)で、当時最先端のヴィクトリア朝建築様式を採用した近代的な施設として誕生しました。その名前「Bruichladdich」はスコットランド・ゲール語で「海岸の岩棚」を意味し、まさにその立地を表しています。アイラ島の中でも特に穏やかで塩気を帯びた潮風が吹き込むこの場所は、熟成環境としても独特の個性をウイスキーに与えます。蒸溜所の建物は現在もほぼ創業当時の姿を保っており、ヴィクトリア朝時代の建築美と機能美が融合した外観は、訪れる人々を魅了し続けています。アイラ島随一の「アンピーテッド(無泥炭)」スタイルを貫くことで知られ、島内の他の蒸溜所とは一線を画す存在感を放っています。
歴史・沿革
1881年の創業以来、ブルイックラディは数々の試練と復活を繰り返してきました。20世紀初頭には好調な生産を続けましたが、禁酒法時代の影響や世界恐慌による需要減退により、1929年に一時閉鎖を余儀なくされます。その後1937年に再稼働するも、第二次世界大戦中の1941年には再び閉鎖。戦後の1952年に復活を遂げ、スコットランドのウイスキー産業全体の隆盛に乗って生産を続けました。
1960年代にはABCという企業グループの傘下に入り、その後スコッチモルトウイスキー協会などを経て所有者が幾度も変わりました。1994年にはジムビーム・ブランズに買収されましたが、1994年から2001年にかけて再び閉鎖状態となります。この「眠れる蒸溜所」に転機が訪れたのは2001年。ウイスキー愛好家でもある投資家マーク・レイニエらが率いるチームが蒸溜所を買収し、長い沈黙に終止符を打ちました。2012年にはフランスのコニャックメーカー、レミー・コアントロー社が買収し、現在に至ります。レミー社の資本力を背景に設備投資が進み、世界的なプレミアムウイスキーブランドとしての地位を確立しています。
オーナーのこだわり
現在のオーナーであるレミー・コアントロー社のもと、ブルイックラディはヘッド・ディスティラーのアダム・ハネットを中心に「プログレッシブ・ヘブリディアン・ディスティラーズ(Progressive Hebridean Distillers)」を自称し、革新的な哲学を貫いています。その最大のこだわりは「テロワール」の追求です。スコッチウイスキー業界では珍しく、アイラ島産およびスコットランド産の大麦原料にこだわり、産地・農家・収穫年をラベルに明記するほどの徹底ぶりです。
また、ノンチルフィルタード(冷却濾過なし)・ナチュラルカラー(着色料不使用)を全ラインナップで実践し、ウイスキー本来の風味と個性を最大限に引き出すことを最優先としています。泥炭(ピート)使用においても独自の姿勢を持ち、メインのブルイックラディラインはアンピーテッドで爽やかなフルーティーさを表現しつつ、「ポートシャーロット」では中程度のピート、そして「オクトモア」では世界最高峰のヘビーピートという三つのシリーズを展開。一つの蒸溜所でここまで多様なスタイルを真剣に追求するブランドは世界でも類を見ません。
テイスト プロファイル
ブルイックラディのフラッグシップ「クラシックラディ」を基準としたテイストプロファイルは以下の通りです。
| 風味軸 | スコア(1〜10) | コメント |
|---|---|---|
| スモーキー | 2 | アンピーテッドのため、ほぼスモーキーさはなし。潮風由来のごく微細なブライニーノートのみ。 |
| フルーティー | 8 | 青リンゴ・洋梨・柑橘系の爽やかなフルーティーさが主体。非常に華やか。 |
| スパイシー | 5 | 白胡椒やジンジャーのような穏やかなスパイス感。刺激的すぎず、バランスが良い。 |
| 甘み | 7 | バニラ・ハチミツ・麦芽の自然な甘みが豊か。バーボン樽由来のまろやかな甘さが特徴。 |
| ビター | 4 | 後味にほんのりとしたビター感。ダークチョコレートやオーク由来のタンニンが余韻を引き締める。 |
全体として、アイラ島産ウイスキーのイメージを覆すクリーンでエレガントなスタイルが特徴です。ノンチルフィルタードによるクリーミーなテクスチャーと、スコットランド産大麦由来の穀物感がしっかりと感じられ、加水によって花のような香りがさらに開きます。ポートシャーロットやオクトモアシリーズでは上記からスモーキースコアが大幅に上昇します。
オフィシャルボトルラインナップ
| 銘柄名 | 参考価格 | 度数 | 熟成樽 | テイスティングノート |
|---|---|---|---|---|
| ブルイックラディ クラシックラディ | ¥5,500〜¥6,500 | 50% | アメリカンオーク+フレンチオーク | 青リンゴ・洋梨・バニラ・ハチミツ。クリーンでエレガントなアイラモルトの入門版。 |
| ブルイックラディ ザ・ラディ10年 | ¥8,000〜¥10,000 | 46% | バーボン樽 | 桃・アプリコット・バニラクリーム。熟成感と果実味の絶妙なバランス。 |
| ポートシャーロット10年 | ¥9,000〜¥11,000 | 50% | バーボン樽+フレンチオーク | スモーキー・レモングラス・キャラメル。中程度のピートと果実味が見事に融合。 |
| オクトモア 14.1 | ¥30,000〜¥38,000 | 59.4% | アメリカンオーク | 圧倒的なスモーク・バニラ・ダークチョコレート。世界最高峰のヘビーピートモルト。 |
| ブルイックラディ ビンテージ2012 | ¥18,000〜¥22,000 | 50% | シェリー樽フィニッシュ | ドライフルーツ・スパイス・チョコレートオレンジ。複雑で深みある熟成感が魅力。 |
ボトラーズ代表銘柄(現行品)
| 銘柄名 | 参考価格 | 度数 | 熟成樽 | コンセプト | テイスティングノート |
|---|---|---|---|---|---|
| SMWS 29.XXX シリーズ(ブルイックラディ) | ¥18,000〜¥28,000 | カスクストレングス(57〜62%前後) | バーボンホグスヘッド | スコッチモルトウイスキー協会によるシングルカスクボトリング。会員限定で個性豊かな表現を楽しめる。 | トロピカルフルーツ・バニラ・麦芽の甘み。フレッシュかつ力強いカスクストレングスの醍醐味。 |
| ゴードン&マクファイル ブルイックラディ 14年 | ¥15,000〜¥20,000 | 46% | リフィルシェリーバット | 英国最古のボトラーによる丁寧な樽選定。長年の経験から生まれる安定したクオリティが魅力。 | レーズン・ダークチェリー・スパイス・ほのかなスモーク。シェリー樽がブルイックラディの果実味を引き立てる。 |
| ザ・ウイスキーエージェンシー ブルイックラディ 2009 | ¥22,000〜¥30,000 | カスクストレングス(54%前後) | バーガンディワイン樽フィニッシュ | ドイツの独立ボトラーによるユニークな樽選定。ワイン樽との融合でブルイックラディの新境地を探る。 | 赤ベリー・ローズ・白桃・キャラメル。ワイン由来の華やかさとモルトの甘みが絶妙に絡み合う。 |