蒸溜所の始まり

ダルモア蒸溜所は、1839年にスコットランド・ハイランド地方のロス=シャイア州、アリネス(Alness)近郊のクロマティー湾(Cromarty Firth)沿岸に設立されました。「ダルモア(Dalmore)」という名前はゲール語で「大いなる牧草地」を意味し、その名の通り、豊かな自然と広大な平野に囲まれた絶好の立地に位置しています。蒸溜所の目の前にはクロマティー湾が広がり、ハイランドの清澄な空気と良質な仕込み水がウイスキー造りに理想的な環境を提供しています。創業者はアレクサンダー・マセソン(Alexander Matheson)で、当時この地域の農業用地を活用し、穀物と水資源の豊富さを活かしたウイスキー製造に着手しました。クロマティー湾から吹き込む潮風がウイスキーの熟成に微妙な影響を与えるとも言われており、ダルモア独特のリッチで複雑なキャラクターの源泉のひとつとなっています。

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歴史・沿革

1839年の創業後、1867年にはアンドリュー・ホワイテカー(Andrew Whiteaker)が経営を引き継ぎ、その後1874年にマッケンジー(Mackenzie)一族が蒸溜所を取得します。このマッケンジー家による経営は長く続き、ダルモアのブランドアイデンティティ確立に大きく貢献しました。特筆すべきは、ダルモアのシンボルである「12ポイントの鹿の紋章(Royal Stag)」で、これはマッケンジー家の紋章に由来し、1263年のアーン川の戦いで先祖がスコットランド国王アレクサンダー3世を野生の雄鹿の突撃から救ったという逸話に基づいています。
第一次世界大戦中の1917年には蒸溜所が海軍省に接収され、アメリカ海軍の機雷製造施設として使用されるという異色の歴史も持っています。戦後に蒸溜業が再開され、1960年代にはホワイト&マッカイ(Whyte & Mackay)社がダルモアを傘下に収めました。その後、ホワイト&マッカイ自体もオーナーが幾度か変わり、2014年にはフィリピンの複合企業であるエンペラドール(Emperador Inc.)グループがホワイト&マッカイを買収したことにより、現在に至っています。2000年代以降はプレミアム・ラグジュアリー路線を強化し、「ダルモア62」が2002年にオークションで当時のシングルモルト世界最高額を記録するなど、コレクターズアイテムとしての地位を不動のものとしました。

オーナーのこだわり

現在ダルモアのマスターディスティラーを務めるリチャード・パターソン(Richard Paterson)は、業界内で「ザ・ノーズ」の異名を持つ伝説的なブレンダーです。50年以上にわたるキャリアを持つ彼の哲学は、「時間と樽がウイスキーを完成させる」という熟成へのこだわりに凝縮されています。ダルモアはシェリー樽熟成に特別な情熱を注いでおり、特にゴンザレス・ビアス(Gonzalez Byass)社のアモンティリャードやオロロソ・シェリー樽を厳選して使用しています。
リチャード・パターソンが特にこだわるのは「マリッジ(marriage)」と呼ばれるフィニッシング技法で、異なる樽で熟成させたウイスキーを最終段階で組み合わせ、再度樽で寝かせることで複雑なフレーバーを生み出します。この手法によりダルモアは深みのあるリッチなチョコレートやオレンジピール、ドライフルーツの風味を特徴とするスタイルを確立しています。ラグジュアリーブランドとしての価値観を大切にしながらも、日常的に楽しめるエントリーボトルにも妥協しないという姿勢が、幅広い支持を集める理由です。

テイスト プロファイル

フレーバー軸 スコア(1〜10)
スモーキー 2
フルーティー 9
スパイシー 5
甘み 9
ビター 4

ダルモアはノンピートのハイランドモルトであり、スモーキーさはほとんど感じられません。その代わり、シェリー樽由来のリッチなドライフルーツ、オレンジマーマレード、ダークチョコレート、バニラなどの甘くフルーティーなキャラクターが全面に出るのが最大の特徴です。甘みとフルーティーさが高水準で共存しており、ハイランドモルトの中でも特にリッチでラグジュアリーなプロファイルを持つ蒸溜所として高く評価されています。

オフィシャルボトルラインナップ

銘柄名 参考価格 度数 熟成樽 テイスティングノート
ダルモア 12年 約5,500円 40% バーボン樽+オロロソシェリー樽フィニッシュ オレンジマーマレード、ミルクチョコレート、シナモン、バニラの穏やかな甘み
ダルモア 15年 約11,000円 40% バーボン樽+アモンティリャード・マトゥサレム・アプロシオシェリー樽 ダークチョコレート、ドライフルーツ、スパイス、なめらかなタンニン
ダルモア 18年 約22,000円 43% アメリカンホワイトオーク樽+オロロソシェリー樽 リッチなトフィー、イチジク、ジンジャー、オークのスパイス、長い余韻
ダルモア キング・アレクサンダー3世 約25,000円 40% 6種の樽(バーボン・シェリー・マデイラ・ポート・カベルネソーヴィニヨン・クリーム) 複雑なバナナ、ダークベリー、コーヒー、ヘーゼルナッツ、柔らかいスパイス
ダルモア シトラス エステート 約18,000円 42% バーボン樽+柑橘系ワイン樽フィニッシュ グレープフルーツ、レモンカード、白桃、フローラルな軽やかな甘み

ボトラーズ代表銘柄(現行品)

銘柄名 参考価格 度数 熟成樽 コンセプト テイスティングノート
Gordon & MacPhail Dalmore 2008 (15年) 約28,000円 46% リフィルバーボンホグスヘッド 蒸溜所のピュアなキャラクターを引き出すゴードン&マクファイル流シングルカスク 洋梨、リンゴ、微かなバニラ、麦芽の甘み、クリーンでエレガントな余韻
Signatory Vintage Dalmore 2011 (12年) 約22,000円 46% ファーストフィルシェリーバット シグナトリーが厳選したシェリー樽熟成のシングルカスク。非冷却濾過・無着色 レーズン、ダークチェリー、チョコレートファッジ、ウォームスパイス、豊かなフィニッシュ
The Whisky Barrel Dalmore 2012 (10年) 約18,000円 60.5% バーボンバレル カスクストレングスでダルモアのフレッシュなフルーティーキャラクターを堪能できる一本 グリーンアップル、トロピカルフルーツ、蜂蜜、オーク、力強い甘みとスパイスのバランス