蒸溜所の始まり
ヘーゼルバーン(Hazelburn)は、スコットランド西海岸のキャンベルタウンに実在した歴史的な蒸溜所の名を冠したウイスキーブランドです。現在このウイスキーは、同じキャンベルタウンに位置するスプリングバンク蒸溜所(J&A Mitchell & Co.)が製造しています。スプリングバンク蒸溜所は、キャンベルタウンの中心部、ロングロー・ストリートに隣接する歴史的な敷地に立地し、スコットランドでも数少ない家族経営の独立系蒸溜所として知られています。ヘーゼルバーンという名称は、キャンベルタウンにかつて存在した同名の蒸溜所(1796年創業、1925年閉鎖)へのオマージュとして復活したものであり、地域の蒸溜文化を現代に伝える重要な役割を担っています。ノンピートの麦芽を使用し、スコッチウイスキーの中でも非常に珍しい「トリプル蒸溜」を採用することで、際立って滑らかでクリーンなキャラクターを実現しているのが大きな特徴です。
歴史・沿革
キャンベルタウンはかつて「スコッチウイスキーの首都」と呼ばれ、19世紀末には30を超える蒸溜所が稼働していた一大産地でした。オリジナルのヘーゼルバーン蒸溜所は1796年に創業し、地域の繁栄を支えた蒸溜所の一つでしたが、禁酒法時代のアメリカへの輸出激減や品質問題による市場の信頼喪失が重なり、1925年に惜しまれながら閉鎖されました。
その後、同地域を守り続けたスプリングバンク蒸溜所のJ&A Mitchell社が、2000年にヘーゼルバーンの名を復活させる形で新たなウイスキーブランドとしてリリースを開始しました。スプリングバンク蒸溜所自体は1828年創業であり、Mitchell家が長年にわたって所有・経営しており、スコッチウイスキー業界における独立系蒸溜所の象徴的存在です。ヘーゼルバーン復活は、単なる商業的展開ではなく、キャンベルタウンの蒸溜文化を次世代へ伝えるという強い使命感に裏打ちされていました。現在ではスプリングバンク(2.5回蒸溜・ライトリーピーテッド)、ロングロー(2回蒸溜・ヘビーピーテッド)、そしてヘーゼルバーン(3回蒸溜・ノンピート)という三つの異なるスタイルのウイスキーが同一の蒸溜所で造られ、それぞれが独自のキャラクターを持っています。
オーナーのこだわり
現在のオーナーはJ&A Mitchell & Co.であり、Mitchell家が代々その哲学と技術を受け継いでいます。同社の経営哲学の根幹にあるのは「妥協なき品質」と「独立性の維持」です。大手コングロマリットに属さず、フロアモルティング(床麦芽製法)を自社で継続している数少ない蒸溜所の一つとして、原料の大麦の選定から製麦、蒸溜、熟成、瓶詰めに至るまで一貫して自社管理を徹底しています。
ヘーゼルバーンにおいては、ノンピート麦芽を使用したトリプル蒸溜にこだわることで、キャンベルタウンスタイルの力強さを保ちながらも、アイリッシュウイスキーにも通じる軽やかでエレガントな味わいを追求しています。熟成においてもバーボン樽、シェリー樽、ワイン樽など多彩な樽を積極的に活用し、ヴィンテージやカスクタイプによって異なる表情を楽しめるよう設計されています。量より質を優先した少量生産のスタンスは、世界中のウイスキー愛好家から高い支持を集めています。
テイスト プロファイル
| フレーバー軸 | スコア(1〜10) |
|---|---|
| スモーキー | 1 |
| フルーティー | 8 |
| スパイシー | 4 |
| 甘み | 7 |
| ビター | 3 |
ヘーゼルバーンの最大の特徴はスモークが皆無に近いクリーンさです。トリプル蒸溜によって雑味が丁寧に取り除かれ、洋梨やリンゴを想わせる瑞々しいフルーツ香が前面に出ます。バーボン樽熟成のものはバニラとトロピカルフルーツの甘みが際立ち、シェリー樽フィニッシュのものにはドライフルーツや微かなチョコレートのニュアンスが加わります。スパイスはあくまで控えめで、後味はすっきりとしており、ウイスキー初心者から上級者まで幅広く楽しめる懐の深いプロファイルを持っています。
オフィシャルボトルラインナップ
| 銘柄名 | 参考価格 | 度数 | 熟成樽 | テイスティングノート |
|---|---|---|---|---|
| Hazelburn 10年 | 約8,000〜10,000円 | 46% | バーボン樽 | 洋梨、グリーンアップル、バニラ、蜂蜜。軽やかでクリーンな飲み口。 |
| Hazelburn 12年 CV(カスクヴァラエーション) | 約12,000〜15,000円 | 46% | バーボン樽+シェリー樽 | リンゴ、カスタード、レーズン、オレンジピール。複雑さと滑らかさが共存。 |
| Hazelburn Rundlets & Kilderkins | 約15,000〜18,000円 | 50.1% | 小型バーボン樽・小型シェリー樽 | バナナ、チョコレート、スパイス。小型樽熟成由来の凝縮感と深み。 |
| Hazelburn 8年 Oloroso Sherry Wood | 約10,000〜13,000円 | 46% | オロロソシェリー樽フィニッシュ | プラム、ダークチェリー、ダークチョコ、微かなタンニン。リッチで華やか。 |
| Hazelburn 13年 Sauternes Wood Expression | 約18,000〜22,000円 | 47.4% | バーボン樽+ソーテルヌワイン樽フィニッシュ | 白桃、アプリコット、蜂蜜、白ワイン。上品な甘みと爽やかな酸が調和。 |
ボトラーズ代表銘柄(現行品)
| 銘柄名 | 参考価格 | 度数 | 熟成樽 | コンセプト | テイスティングノート |
|---|---|---|---|---|---|
| Signatory Vintage Hazelburn 11年 | 約20,000〜28,000円 | 57.8% | バーボンホグスヘッド | カスクストレングスで原酒本来の力強さを表現。少量限定リリース。 | 洋梨、バニラ、モルティな穀物感、微かなスパイス。余韻は長くシルキー。 |
| Gordon & MacPhail Hazelburn 2009(Distillery Labels) | 約22,000〜30,000円 | 46% | リフィルバーボン樽 | G&Mが誇る長期熟成管理技術で丁寧に育てたシングルカスク。 | グリーンアップル、シトラス、オーク、ほのかなミント。エレガントで余韻清澄。 |
| Càrn Mòr Strictly Limited Hazelburn 12年 | 約18,000〜24,000円 | 52.2% | シェリーバット | モリソン&マッケイが手がける個性派ボトラーズ。シェリー樽の影響を前面に押し出したリッチスタイル。 | ドライフルーツ、ダークチョコ、ウォールナッツ、クリーミーなフィニッシュ。 |