蒸溜所の始まり

モートラック蒸溜所は、スコットランド・スペイサイド地方のダフタウン(Dufftown)に位置する、この地域で最も古い歴史を持つ蒸溜所のひとつです。ダフタウンはスペイサイドのウイスキー生産の中心地として知られ、「ウイスキーの首都」とも称される町です。モートラックはその中心部から少し外れた丘の麓、フィディック川(River Fiddich)沿いの豊かな自然環境の中に建てられています。
蒸溜所の設立は1823年。スコットランドのウイスキー産業が合法化の道を歩み始めた直後、ジェームズ・フィンドレーター(James Findlater)、ドナルド・マッキントッシュ(Donald Mackintosh)、アレクサンダー・ゴードン(Alexander Gordon)の3人によって創業されました。1823年の消費税法(Excise Act)によって蒸溜免許の取得が現実的になったことで、モートラックはスペイサイドにおける合法的ウイスキー製造の先駆けとなりました。地域の恵まれた水源と豊富な大麦を活かし、当初から品質の高いスピリッツを生産してきたことが、その後の長い歴史の礎となっています。

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歴史・沿革

モートラックの歴史は激動の近代スコッチウイスキー史と深く重なります。創業後、蒸溜所は数度の所有者変更を経ながら発展を続けました。1853年にはジョージ・コウィー(George Cowie)が蒸溜所を取得し、以降コウィー家が長期にわたって経営を担います。コウィーの息子であるドクター・アレクサンダー・コウィー(Dr. Alexander Cowie)は特に重要な人物で、独特な蒸溜プロセス「2.81回蒸溜」と呼ばれる複雑なスチル構成を確立し、モートラックの個性を決定づけました。
1923年、コウィー家はジョン・ウォーカー&サンズ(John Walker & Sons)に蒸溜所を売却。その後、ウォーカーを傘下に持つDCL(Distillers Company Limited)の管理下に移行します。DCLは1987年にギネスに買収され、さらに1997年にはギネスとグランドメトロポリタンが合併してディアジオ(Diageo)が誕生。モートラックは現在もディアジオが所有しています。
2014年にはディアジオがモートラックを「シングルモルトの獣(The Beast of Dufftown)」というキャッチフレーズとともにプレミアムブランドとして大々的にリローンチ。ラグジュアリーラインとして市場に投入し、スペイサイドを代表するシングルモルトのひとつとして世界的な認知度を大幅に高めました。2018年にはさらにラインナップを整備し、現在の体制が確立されています。

オーナーのこだわり

現オーナーのディアジオは、モートラックを単なる量産ウイスキーとしてではなく、スペイサイドを代表するラグジュアリーシングルモルトとして位置づけています。その核心にあるのが、「2.81回蒸溜(2.81 Times Distilled)」と呼ばれる独自の蒸溜哲学です。通常のスコッチウイスキーが2回蒸溜であるのに対し、モートラックでは6基のポットスチルを組み合わせた複雑なプロセスを経ることで、豊かで肉感的なスピリッツが生み出されます。この手法は19世紀にコウィー家が確立したもので、ディアジオもこの伝統を忠実に継承しています。
モートラックのマスターディスティラーを含む生産チームは、熟成樽の選定にも極めて厳格な姿勢を持ちます。ヨーロピアンオークのシェリー樽と、アメリカンオークのバーボン樽を巧みに組み合わせることで、深みのある果実味と独特のスパイシーさを引き出しています。「The Beast of Dufftown」というニックネームが示すとおり、力強さと複雑さを兼ね備えたキャラクターこそが、モートラックのアイデンティティであるとディアジオは考えています。

テイスト プロファイル

フレーバー軸 スコア(1〜10) 印象
スモーキー 3 ピートはほぼ感じられず、わずかにスモーキーなニュアンスが奥に潜む程度
フルーティー 8 ダークフルーツ、プラム、レーズンなど熟した果実の豊かな香り
スパイシー 7 胡椒やシナモン、ジンジャーなどのスパイスが力強く展開する
甘み 7 シェリー由来のリッチな甘さ、蜂蜜やトフィーのニュアンスが心地よい
ビター 6 ダークチョコレートやエスプレッソを思わせる芯のある苦みが余韻に残る

モートラックの最大の特徴は、「肉感的(Meaty)」と表現される独特のボディの厚さです。2.81回蒸溜によって生み出されるヘビーなニューメイクスピリッツは、長期熟成を経ることで複雑な層を形成します。シェリー樽由来の濃厚な果実味と甘み、スパイスの力強さ、そして余韻に残るビタースウィートな余韻が絶妙なバランスをなし、スペイサイドらしい上品さの中に野性的な力強さが宿る唯一無二の個性を持ちます。

オフィシャルボトルラインナップ

銘柄名 参考価格 度数 熟成樽 テイスティングノート
Mortlach 12年 The Wee Witchie 約8,000円 43.4% シェリー樽&バーボン樽 洋梨、蜂蜜、シナモン、プラム。軽快でフルーティーなエントリーボトル
Mortlach 16年 Distiller’s Dram 約15,000円 43.4% シェリー樽(ファーストフィル) ダークチョコレート、ドライフルーツ、革、スパイス。力強く複雑な中核モデル
Mortlach 20年 Cowie’s Blue Seal 約35,000円 43.4% シェリー樽&バーボン樽(長期熟成) ブラックベリー、タバコ、ウォールナット、オレンジピール。深みと優雅さが融合
Mortlach 25年 約120,000円 43.4% ファーストフィルシェリーバット アンティークな木材、ドライプルーン、コーヒー、ダークハニー。究極のラグジュアリー
Mortlach Special Strength 約10,000円 49% シェリー樽&リフィル樽 力強いミート感、胡椒、カカオ、フレッシュフルーツ。肉感的なモートラックの本質を体感

ボトラーズ代表銘柄(現行品)

銘柄名 参考価格 度数 熟成樽 コンセプト テイスティングノート
Gordon & MacPhail Connoisseurs Choice Mortlach 約18,000円 46% リフィルシェリーホグスヘッド GM社が長年愛してきたモートラックをナチュラルカラー・ノンチルフィルタードで表現 ドライフルーツ、ヘーゼルナッツ、スパイス、ほのかなスモーク。クラシックな風格
Cadenhead’s Authentic Collection Mortlach 約22,000円 57%前後(カスクストレングス) バーボンバレル スコットランド最古のボトラーによるカスクストレングス・ノンチルフィルタード瓶詰め バニラ、洋梨、青リンゴ、ジンジャー。軽やかな樽感とフレッシュフルーツが印象的
Signatory Vintage Mortlach Cask Strength Edition 約25,000円 58〜62%(ビンテージにより変動) ファーストフィルシェリーバット ビンテージ単一樽瓶詰め。シグナトリー社がモートラックの肉感的個性を原酒そのままで提供 ダークプラム、チョコレートファッジ、革、クローブ。圧倒的な複雑さと長い余韻