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なぜ「余市好き」にハイランドモルトのボトラーズが響くのか?

ジャパニーズウイスキーの最高峰として君臨し、世界中の愛好家を魅了し続ける「シングルモルト余市」。その最大の魅力は、日本・北海道の厳しい大自然が育んだ、力強く重厚な麦芽感と、石炭直火蒸留に由来する煤(すす)を伴うピーティさ、そしてどこか哀愁を帯びた潮風のニュアンスにあります。ウイスキーを飲み進め、余市のような「骨太で野生味あふれる一杯」を愛するようになった中上級者が、次なる探求の地としてスコットランドの「ハイランドモルト」、それも独立系瓶詰業者(ボトラーズ)が手がけるボトルに辿り着くのは、ある種、必然の流れと言えるでしょう。ハイランドには、余市が持つあの「武骨で媚びない生命力」に通ずる共通のDNAが、驚くほど濃厚に息づいているからです。

【初心者向け:ボトラーズウイスキーとは?】

ウイスキーには大きく分けて2つのボトルが存在します。1つは、蒸留所自身が原酒をブレンドし、自社ブランドとして販売する「オフィシャルボトル(元詰め)」。もう1つが、今回の主役である「ボトラーズボトル(独立系瓶詰業者)」です。ボトラーズとは、さまざまな蒸留所から原酒が入った「樽」を買い取り、自社の倉庫で独自に熟成させたり、独自のタイミングで瓶詰め(ボトリング)して販売する専門会社のこと。オフィシャルボトルが「誰にでも愛される安定した味わい」を目指すのに対し、ボトラーズボトルは「一樽ごとの強烈な個性や野生味」をそのまま引き出すため、個性的で力強いウイスキーを求めるファンから絶大な支持を得ています。

重厚な麦芽感とオイリーさ:余市と共通する力強い酒質

余市の味わいを形作る最大の技術的特徴は、世界でも極めて稀となった「石炭直火蒸留(せきたんじかびじょうりゅう)」です。蒸留釜の下から石炭の炎で直接、約1000度という高温で不均一に熱を加えることで、釜の底部にわずかな「焦げ」が生じます。これが余市特有の重厚で香ばしい、焦げ感を伴う力強い酒質(ヘビーでオイリーな原酒)を生み出すのです。この技術は、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝氏が、かつてスコットランドのハイランド地方(ロンゲスモーン蒸留所など)で学んだ伝統的な手法そのものです。

これに対抗し得る骨太なキャラクターを持つのが、現在のスコットランド・ハイランド地方に点在する伝統的な蒸留所です。例えば「クライヌリッシュ」が持つワックスのようなオイリー(※口の中にねっとりと残る、植物性油のようなリッチな質感)さや、「ベン・ネヴィス」が持つ凝縮された麦汁のような重厚なテクスチャー(口当たり)は、余市の持つ飲み応えと非常に近いベクトルにあります。

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ボトラーズのリリースでは、これらの蒸留所が持つ「オフィシャルボトルでは優しく整えられてしまう、本来の野性的なボディ感」が、加水(アルコール度数を下げるために水を加えること)や過度な濾過を排してストレートに表現されます。蒸留したての透明な原酒である「ニューメイク(樽に詰めて熟成させる前の、無色透明な高アルコールスピリッツ)」の段階から、各蒸留所が頑なに守り続けてきた骨太な個性が、樽熟成を経てダイレクトにグラスへ注がれるのです。注いだ瞬間に立ち上る圧倒的な麦芽の密度と濃厚な口当たりは、余市ファンにとって強烈なデジャヴを伴う感動をもたらすはずです。

ハイランド特有の「微かなピートと潮風」がもたらす野生美

余市を余市たらしめているもう一つの要素が、石狩湾からの潮風を浴びて熟成されるロケーションと、ピート(泥炭:ヒースなどの植物が数千年にわたり堆積してできた泥状の炭。ウイスキーに独特のスモーキーな香りをもたらす)の燻煙香です。アイラモルトのような極端な薬品臭(正露丸やヨード液に例えられる独特な香り)ではなく、大自然の土や草、そして海を連想させる「調和の取れたピート感」こそが余市の美学です。

このバランス感は、ハイランドモルトのボトラーズボトルにおいて完璧な形で再現されています。ハイランド地方は非常に広大であり、その土地のピートにはヘザー(低木・ツツジ科の植物)などの地表植物が多く含まれ、マイルドでありながらも非常に複雑なスモーキーさをもたらします。さらに、北ハイランドの沿岸部にある蒸留所原酒は、北海の荒波が運ぶ塩分を含んだ風を長年浴びることで、心地よい塩気をその身に宿します。

ボトラーズが厳選するカスク(ウイスキーを熟成させる木樽)から取り出されたシングルカスク(単一の樽のみから瓶詰めされたウイスキー)のハイランドモルトは、余計な加水による薄まりがないため、これらの「ピート、潮風、野生のハーブ」といった複雑な要素が凝縮されており、余市好きの鋭い嗅覚と味覚を十二分に満足させてくれます。

ハイランドウイスキーのエリア別テロワールとボトラーズの親和性

スコットランドのウイスキー生産地域の中で最も広い面積を誇るハイランド。そのテロワール(風土・土地の個性)は一言では語れず、東西南北の4つのエリアに大別されます。オフィシャルボトル(蒸留所元詰め)は、ブランドのイメージを一定に保つために、様々な樽をブレンドして平均化された「ハウススタイル(その蒸留所の基準となる定番の味わい)」を提示します。しかし、一樽ごとの個性をそのままボトルに詰めるボトラーズウイスキーにおいては、それぞれのエリアが持つ極端なまでの個性が、純度100%の状態で牙を剥きます。この多様性と、隠れた個性の引き出し方こそが、ボトラーズとハイランドモルトの最強の親和性です。

東西南北で激変するハイランドのキャラクターマップ

ハイランドを東西南北に分けた時、それぞれのテロワールは以下のような特徴を持ちます。

  • 北ハイランド(塩気・ミネラル・ワックス):クライヌリッシュやバルブレアに代表される。乾燥したスパイス、豊かなワックス感、そして海岸線特有のソルティ(潮気)な余韻が特徴。余市の「海のニュアンス」を好む人に最適。
  • 東ハイランド(ピーティ・武骨・麦汁感):アードモアやグレンギリーに代表される。かつて主流だったピーティな伝統的ハイランドスタイルを色濃く残し、土っぽさや骨太なハチミツの甘みが共存する。余市の「力強い煙と麦」に最も近い。
  • 南ハイランド(ライト・フルーティ・ナッティ):グレンカダムやディーンストンに代表される。比較的ソフトな酒質で、バニラやナッツの香ばしさが際立つ。繊細でありながらもしっかりとした芯がある。
  • 西ハイランド(スモーキー・オイリー・フルーティ):ベン・ネヴィスやオーバンに代表される。雨が多く温暖な気候。南国フルーツを思わせる熟した果実香と、重厚で煤けたオイリーなピート感が絶妙に同居する。

ボトラーズは、これらの気候風土が原酒に刻み込んだ微細なシグナルを、一切の妥協なしにボトリングします。そのため、エリアごとのキャラクターがオフィシャルボトル以上に明確に体感できるのです。

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オフィシャルの「ハウススタイル」を凌駕するボトラーズのシングルカスク

多くの大手蒸留所のオフィシャルボトルは、何百、何千という樽をブレンド(ヴァッティング)し、常に均一な味わいを世界中へ安定供給することを目指しています。しかしそのプロセスにおいて、特定の樽だけが持っていた「突き抜けた個性」や「心地よい野性味(不均一さ)」は、全体の調和のために削ぎ落とされてしまいます。

一方、ボトラーズがリリースする「シングルカスク(単一の樽のみから瓶詰め)」や、加水を一切行わず樽出し時の度数そのままに仕上げる「カスクストレングス(加水なし)」は、その逆を行きます。樽の中で偶然生まれた、奇跡的なまでの濃密な麦の甘み、あるいは予想外に強く主張する塩気やピート香など、その一瞬、その一樽にしか出せない野生的な個性をそのまま保存します。余市のような個性的で主張の強いウイスキーを好む中上級者にとって、この「ブレンドによる調和」を凌駕する「一期一会の野生的な個性」こそが、ボトラーズを選ぶ最大の歓びなのです。

ボトラーズの2大巨頭が描くハイランド:G&M vs ケイデンヘッド

ボトラーズウイスキーの世界を探求する上で、絶対に避けて通れない2大巨頭が存在します。それが、最古の歴史を誇る「ケイデンヘッド(Cadenhead’s)」と、究極の樽管理技術を持つ「ゴードン&マクファイル(Gordon & MacPhail / 以下G&M)」です。この両者は、ハイランドモルトという同じ素材を扱いながらも、全く異なるアプローチでその魅力を引き出します。両者の哲学の違いを理解することは、自分好みのボトルを探し出す最高のロードマップとなります。

「樽の魔術師」ゴードン&マクファイル(G&M)が魅せる超長期熟成の美学

1895年にスコットランド・エルギンで創業したG&M社は、「樽の魔術師」と称されます。彼らのアプローチの最大の特徴は、「蒸留所からニューメイク(樽に入れる前の透明な原酒)を購入し、自社で用意した厳選の特製カスクに詰めて自社のウェアハウス(熟成庫)で熟成させる」という徹底したスタイルにあります。他社ボトラーのように「すでに樽に入った成熟中の原酒を買い取る」のではなく、原酒の個性に合わせた最適な樽を自社で設計・管理して組み合わせるのです。

特に彼らが多用するのが「ファーストフィル(※他の酒類、主にシェリー酒の熟成に一度だけ使われた後、ウイスキー用に初めて使われる高品質な空き樽)」のシェリー樽です。この樽からは、非常に濃厚でフルーティな風味、そしてオーク材由来の複雑なスパイスが原酒へと移行します。

このアプローチにより、G&Mが手がけるハイランドモルト(代表レンジ:コニサーズチョイスなど)は、驚くほどエレガントで複雑、かつフルーティな洗練された美しさを放ちます。特に長期熟成における安定感は抜群で、木樽由来のシルキーなタンニン(渋み成分)と、ハイランドモルトが持つ本来の麦芽の旨味を極限まで調和させます。「余市の持つ、洗練されたダークチョコレートやドライフルーツのようなシェリー樽由来の重厚感」を求めるなら、G&Mのコニサーズチョイス(ウッドフィニッシュやシングルカスク)は至高の選択肢となります。

「黒ケイデン」でおなじみケイデンヘッドが貫く無濾過・原酒の力強さ

一方、1842年にアバディーンで創業し、現在はキャンベルタウンの名門「スプリングバンク蒸留所」と同資本傘下にあるケイデンヘッド社は、徹底して「素材そのままの武骨さ」を追求します。彼らの哲学はいたってシンプルで、「加水しない(カスクストレングス)」、「冷却濾過をしない(ノン・チルフィルター)」、「着色をしない(ノン・カラーリング)」。樽の中で熟成されていた状態のウイスキーを、そのままガラス瓶に移し替えたかのような、極めてダイレクトなスタイルです。

一般的なウイスキーで行われる「冷却濾過(チルフィルター)」とは、ウイスキーが冷えたときに澱(おり)や濁りが出るのを防ぐために行われる工程ですが、このプロセスにより、ウイスキーの美味しさの核である脂肪酸や香味成分(オイル分)までもが一部除去されてしまいます。ケイデンヘッドはこれを行わない「ノン・チルフィルター(冷却ろ過を行わない製法)」を貫き、樽本来の風味を100%ボトルに閉じ込めます。

通称「黒ケイデン」と呼ばれる黒いラベルが印象的なオーセンティック・コレクションや、現在の「オリジナルコレクション」からリリースされるハイランドモルトは、荒々しくも生命力に満ち溢れています。アルコール度数は50度〜60度近くに達することも珍しくなく、口に含んだ瞬間に暴れるような麦芽の旨味、オイリーなテクスチャー、そして直接的なピートの刺激が五感を襲います。この「計算されていない、ありのままの武骨さ」は、まさに余市の持つ力強い石炭直火のスピリッツに通ずるものがあり、ウイスキー本来のパンチ力を求める愛好家を虜にし続けています。

余市好きに贈る!ハイランドモルトのボトラーズおすすめ5選

ここからは、余市が持つ「塩気、オイリー、ピート、重厚な麦芽感」という要素に焦点を当て、それらを限界まで尖らせたボトラーズのハイランドモルトのおすすめ5銘柄を具体的に紹介します。それぞれのボトルがどのような個性を放ち、なぜ余市好きの心を撃ち抜くのかをロジカルに解説します。

1. クライヌリッシュ(G&M コニサーズチョイス)- ワックスと潮風の芸術

北ハイランドを代表する「クライヌリッシュ」は、ウイスキー通であれば誰もが一度は憧れる名酒です。特にG&Mの「コニサーズチョイス」からリリースされるクライヌリッシュは、この蒸留所の代名詞である「ワックスのような滑らかな質感」と「心地よい潮風のソルティさ」を完璧なバランスで表現しています。

【味わいと余市との共通点】
トップノート(最初に鼻で感じる香り)では、完熟したリンゴやハチミツを塗ったトーストのような甘やかさ。口に含むと、まるで蜜蝋(みつろう)を思わせるようなネットリとしたオイリーなテクスチャーが広がり、中盤から塩化ナトリウムのようなシャープな塩気とピリッとしたブラックペッパーのスパイスが現れます。この「オイリーかつソルティ」なプロファイルは、余市の持つ沿岸熟成由来の塩気とヘビーなボディ感に非常に近く、洗練された余韻へと誘います。入手困難度は高いですが、見つけたら絶対に手に入れるべき一本です。

2. ベン・ネヴィス(ケイデンヘッド・オリジナルコレクション)- 重厚な麦汁感と南国フルーツ

西ハイランドのフォートウィリアムズに位置する「ベン・ネヴィス」は、実は日本のニッカウヰスキーが所有している蒸留所であり、余市のブレンド(竹鶴など)にもその原酒が深く関わっているとされる、余市ファンにとっては文字通り「兄弟」のような存在です。ケイデンヘッドがボトリングするベン・ネヴィスは、その野性的な魅力を余すことなく伝えてくれます。

【味わいと余市との共通点】
特筆すべきは、発酵段階から由来する「南国フルーツ(完熟マンゴーやパイナップル)」のようなエキゾチックなエステル香(果実のような華やかな香り成分)と、チョコレートのようにダークで重厚な麦芽感の同居です。ノン・チルフィルタードでボトリングされたケイデンヘッドのボトルは、非常に濃厚で、まるでドロリとした麦汁を飲んでいるかのような錯覚さえ覚えます。余市が持つ力強い麦の甘みと、奥底にある複雑な果実香を愛する人にとって、これ以上のマッチングはありません。

3. アードモア(シグナトリー・アンチルフィルタード)- ハイランドピーティの代表格

東ハイランドに位置するアードモア蒸留所は、ハイランド地方では珍しく、伝統的にライトピーテッド(フェノール値 約10〜15ppm。アイラモルトの半分以下のマイルドな数値)の原酒を造り続けている蒸留所です。優れたコストパフォーマンスとクオリティで定評のあるボトラー「シグナトリー・ヴィンテージ」の「アンチルフィルタード・コレクション」は、アードモアの「スモーキーさ」を最も素直に味わえるシリーズです。

【味わいと余市との共通点】
アイラウイスキーのような強烈な薬品臭(ヨード)ではなく、枯れ葉や薪を燃やした時のような、ドライで土っぽいスモーキーさが特徴。その煙の奥から、焼きリンゴやバニラシロップのような温かみのある甘みがじわじわと染み出してきます。この「ドライで土っぽいピート感と麦芽の甘みの融合」は、まさに余市のピーティなキャラクターそのものであり、スモーキーなハイランドモルトの入門としても、中上級者のデイリーユースとしても最高の一本です。

4. バルブレア(GM ディスカバリー)- 繊細なシェリー香と力強いスパイス

北ハイランド最古の蒸留所の一つである「バルブレア」。G&Mの入門・中級向けシリーズである「ディスカバリー(シェリーカスク・タイプ)」からリリースされるバルブレアは、シェリー樽熟成ウイスキーの王道を行く仕上がりです。

【味わいと余市との共通点】
シナモンやクローブ、レーズン、そしてダークサクランボを思わせる濃厚なシェリー由来のキャラクターが主導します。しかし、バルブレアの真髄はその裏にある「非常に強固でスパイシーな酒質」にあります。シェリーの甘さに負けない、ハイランドらしい武骨な麦の骨格があり、これが余市の「マイカ(重厚なシェリー樽熟成余市)」を彷彿とさせます。フルボディ(非常に濃厚で飲み応えがあること)でありながら、甘ったるくならずにドライなスパイス感で締める構成は、飲み手を飽きさせません。

5. グレンギリー(アデルフィ)- ハイランド東部の武骨さとハチミツの甘み

東ハイランドにあるグレンギリー(アバディーンシャー)は、かつてはピートを強く効かせた武骨なウイスキーとして知られていました。近年、超高クオリティなセレクションで世界中のコレクターから圧倒的な支持を得ている超一流ボトラー「アデルフィ(Adelphi)」がボトリングするグレンギリーは、その「武骨さ」が極限まで美しく磨き上げられています。

【味わいと余市との共通点】
オールドスタイルのハイランドモルトを想起させる、粘土やワックス、そして力強いハニー(ハチミツ)の甘さ。アルコール度数が高く設定されていることが多く、一口飲んだ時のインパクトは今回紹介する中でも随一です。余市が持つ「荒々しさの中にある濃厚なハチミツ・バニラ香」を見事に体現しており、これぞハイランドの真髄と言わんばかりの説得力を持っています。

失敗しないボトラーズ・ハイランドモルトの選び方ガイド

ボトラーズウイスキーの世界は、その一期一会の魅力ゆえに、初心者や中級者にとっては「どう選べば失敗しないのか」という不安がつきまといます。特にオフィシャルボトルのように安定したレビューが出回っていないことも多いため、自らの審美眼(ラベルを読み解く力)が試されます。ここでは、余市ライクな力強いハイランドモルトをハズさずに選ぶための、具体的かつ実践的な3つのテクニックを伝授します。

「ティースプーンモルト」や「地域名ボトル」の正体を解き明かす

ボトラーズウイスキーの棚を見ていると、時折「ワードヘッド(Wardhead)」や「シークレット・ハイランド(Secret Highland)」といった、聞き馴染みのない名前のボトルに出会うことがあります。これらは、大人の事情で蒸留所名が明かされていないシークレットボトル、または「ティースプーンモルト」と呼ばれるものです。

ティースプーンモルトとは、あるシングルモルト(例えばバルヴェニーやグレンモレンジーなど)の樽に、ほんのティースプーン一杯分だけ他のシングルモルト(例えばグレンフィディックなど)を混ぜることで、定義上「シングルモルト」と名乗れなくした(ブレンデッドモルトにした)原酒のことです。しかし、中身は実質的に99.9%以上、名だたる超有名蒸留所のシングルモルトそのものです。これらは、ブランド保護のために蒸留所名を隠す代わりに、非常にリーズナブルな価格でリリースされます。

例えば「シークレット・ハイランド」として売られているボトルの中には、北ハイランドの超人気蒸留所(クライヌリッシュなど)の極上原酒が潜んでいることがよくあります。ラベルに記載された「Clynelish(クライヌリッシュ)」の文字はなくとも、テイスティングノートに「ワックス、潮風、洋梨、ハチミツ」などの記載があれば、それは素晴らしいクライヌリッシュの代替品となり得ます。これを見極める知的好奇心も、ボトラーズ選びの醍醐味です。

カスクタイプ(シェリー樽 vs バーボン樽)と度数がもたらす味わいの分岐点

余市のような「重厚さ」を求める際、ボトルラベルに記載されている「Cask Type(樽の種類)」と「ABV(アルコール度数)」は、極めて重要な判断基準になります。

  • 1stフィル・シェリー樽(ファーストフィル・オロロソ/ペドロヒメネスなど):一度もウイスキーの熟成に使われていないシェリー樽。ダークチョコレート、ドライフルーツ、シナモンなどの濃厚なスパイスと強い甘みをもたらします。余市の「ヘビー・アンド・シェリー」な側面を求めるなら、間違いなくこのタイプ、かつ度数が55度以上のカスクストレングスを狙うべきです。
  • リフィル・バーボンホグスヘッド(またはバレル):バーボン熟成に使われた樽を再利用した樽。樽のキャラクターが優しく出るため、ウイスキー本来の「麦芽の旨味(麦汁感)」や「潮風・ピートの野性味」がダイレクトに楽しめます。余市の「骨太な麦本来の味わいとスモーキーさ」をシンプルに味わいたいなら、リフィルのホグスヘッドで熟成された10年〜15年程度のカスクストレングスが、最も荒々しくも美しいハイランドのテロワールを表現してくれます。

このように、自分が余市のどの要素(シェリー樽の重厚感か、それとも直火由来の麦芽とピートの力強さか)を求めているかによって、樽と度数を選択し分けることが失敗しない近道です。

まとめ:ボトラーズが魅せるハイランドの深淵へ

シングルモルト余市の持つ力強く、スモーキーで、どこか潮風を感じさせる男性的で重厚なキャラクター。その味わいに慣れ親しみ、ウイスキーの奥深さに魅了された中上級者が次に向かうべきフロンティアは、間違いなく「ハイランドモルトのボトラーズウイスキー」です。広大にして過酷な大自然が広がるハイランド地方には、個性的な蒸留所が数多く存在し、ボトラーズの卓越した職人技とこだわりによって、オフィシャルボトルでは隠されてしまう「美しき野性味」が最大限に引き出されています。

オフィシャルを脱却し、自分だけの「ハイランドの隠れた名作」に出会うために

ウイスキーの真の愉しみは、誰かが決めた「定番」から一歩踏み出し、自分だけの「隠れた名作」を見つけ出すプロセスにあります。ボトラーズがボトリングするハイランドモルトは、同じ蒸留所であっても、樽の種類、瓶詰のタイミング、アルコール度数によって、全く異なる表情を見せてくれます。G&Mのエレガントな芸術性に感嘆し、ケイデンヘッドの無骨な生命力に魂を揺さぶられる。そんな体験の積み重ねが、あなたのウイスキーライフをより立体的で、豊かなものにしてくれるでしょう。

Private Whisky Lab Keyakiが提供するボトラーズボトルの愉しみ方

私たち「Private Whisky Lab Keyaki」は、世界中の信頼できるボトラーズから、今回ご紹介したクライヌリッシュやベン・ネヴィスをはじめとする、エッジの効いたハイランドモルトを厳選して仕入れています。余市のような本物のウイスキーを愛する大人の皆様にこそ、この一期一会の深遠なる世界を体験していただきたいと願っています。

当店のオンラインショップ、および実店舗では、ボトラーズボトルの専門知識を持ったコンシェルジュが、あなたのお好みのプロファイル(ピート、麦感、潮気)に合わせた最適な一本を提案いたします。ぜひ最新のストックやテイスティングレビューをチェックし、あなただけの運命のボトルを見つけてください。

Q: 余市に最も味わいが近いハイランドモルトの蒸留所は具体的にどこですか?

A: 最も近いキャラクターを持つのは「ベン・ネヴィス」と「アードモア」です。ベン・ネヴィスは重厚な麦汁感とオイリーさが余市のボディ感に通じており、アードモアはハイランド特有の土っぽくドライなピート感が余市の持つ石炭直火のピートと共通しています。これら2つのボトラーズ版は特におすすめです。

Q: ボトラーズのウイスキーは、なぜオフィシャルボトルに比べて高価なのですか?

A: ボトラーズウイスキーは、大量生産されるオフィシャルボトルとは異なり、単一の樽(シングルカスク)からわずか数百本程度しかボトリングされない「完全限定品」が多いためです。希少価値が非常に高く、冷却濾過や加水をしない原酒そのままのクオリティを提供するため、コストが高くなりますが、それに見合う無二の価値があります。

Q: 「カスクストレングス」のウイスキーを飲む際、おすすめの飲み方はありますか?

A: まずはストレートで、加水されていない本来の力強さとアルコールの圧倒的なボリューム感を味わってください。その後、常温の水を一滴、二滴と少しずつ落とす(加水する)ことで、閉じていた香りが一気に開き、フルーティさや麦の甘みが劇的に変化する様子を愉しむのが中上級者流の飲み方です。

Q: ボトラーズボトルのラベルにある「Cask No」や「Bottle No」にはどのような意味がありますか?

A: 「Cask No(カスクナンバー)」は、そのウイスキーが熟成されていた特定の樽の識別番号です。「Bottle No(ボトルナンバー)」は、その一丁の樽から瓶詰めされた総本数のうち、何本目のボトルであるかを示しています。これらは、そのボトルが世界に一つだけのオリジナルピースであることを証明する大切な数値です。

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